ホーム > 技術紹介一覧 > 技術紹介詳細

一覧へ戻る | < 前のリリース次のリリース >

技術紹介詳細

航空機主翼などの欠陥検査用に広帯域・高感度化した超音波アレイプローブ「曲探」2014/05/01

今回、当社が開発した超音波アレイプローブ「曲探(きょくたん)」(以下 曲探)は、航空機主翼等の欠陥検査用超音波アレイプローブです。
従来の超音波アレイプローブ(以下 アレイプローブ)は、図1に示すようにステンレスやアルミニウムといった硬い筐体でできているため変形せず、検査部位にうまく当てることができず、検査は困難でした。

また、曲げたり、撓み(たわみ)を持たせることが可能な可撓性を有するアレイプローブは当社が2011年に開発し実用化しましたが、超音波の周波数帯域が狭く、時間分解能、感度も低いため、表面直下に存在する欠陥の検査や減衰の大きい先端複合材料などの検査には適しませんでした。
今回開発した「曲探」は、図2に示すように可撓性を有しながら、広帯域・高感度化を実現したアレイプローブです。

「曲探」は、図3及び図4に示すように航空機の主翼やヘリコプターのローターの検査などに応用可能で、航空機メーカのエアバスおよびロールスロイスより実用化ができるとの評価を得ています。
また「曲探」は、医療分野でも適用可能であり、頸動脈の血栓や乳癌の検査などで活用が検討されています。今回開発した「曲探」は、このほかにも自動車、家電、プラント、道路・橋梁など多種多様な方面での活用が期待されています。

曲探」のプローブは、図5に示すように整合層、コンポジット振動子、ダンパー材の当社独自の3層構造になっています。整合層に特殊フィルムを用いることで高感度化を実現。 また、独自開発したダンパー材によりコンポジット振動子から発生する超音波を高速に吸収させ、広帯域化(短波形化)を実現。これにより、可撓性を有し、広帯域・高感度化を実現しました。

図6に示すように従来品との波形比較では、波数の減少が明らかになり、「曲探」が従来品と比較し高分解能であることが分かります。また、図7に示すように従来品との超音波周波数帯域比較では、従来品に比べ「曲探」の周波数帯域が広帯域化していることが分かります。

図8に示ようにテストピースとしてポリスチレンブロックを用い0.1mmピッチで直径1㎜の横穴を画像化した例を図9に示します。従来品との解像力比較では、「曲探」の解像力が優れていることが分かります。

なお、「曲探(きょくたん)」という製品名は、社内公募420件の中から選考した名称で、この名称には、①曲げて探査できる ②局部を探査できる ③極端(=秀でた)な性能 といった当社の従業員の思いと、製品の仕様・形状を併せ持った命名となっています。
今回の「曲探」の開発により、空の安全・安心や鋳鍛造品や溶接部の品質向上、医療分野での福祉向上に少しでも貢献できれば幸いと考えております。

・用語の説明
1)広帯域:周波数帯域が広いこと。広帯域では波数を少なくすることができる。
2)高感度:超音波を受信する信号の強さが大きいこと。高減衰材の検査には高感度が必要。
3)アレイプローブ:ひとつの筐体に多数の振動素子が入っているプローブ。多数の振動素子をまとめて制御できるため柔軟かつ高速な検査が可能。
4)時間分解能:近接した欠陥を分離して検出できる能力。
5)コンポジット振動子:セラミックスに溝を加工し樹脂を充満させ柔軟性を持たせた振動子。
6)整合層:超音波を効率よく送受信できるようにした層。
7)ダンパー材:送信した超音波の波数を少なくし、広帯域にするために発信した超音波を吸収する材料。
・図3、4 写真提供 Phoenix Inspection Systems Limited